2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧
はかりなき 千尋の底の海松房《みるぶさ》の 生《お》ひ行く末は われのみぞ見ん 紫の姫君の髪そぎの折の源氏の君の歌 〜限りなく深い千尋の海の底に生える海松のように 豊かに成長してゆく黒髪は わたしだけが見るとしましょう。 【第9帖 葵 あおい】 きれ…
影をのみ みたらし川の つれなさに 身のうきほどぞ いとど知らるる 葵祭の日☘️源氏の君は 六条御息所の存在に気がつかない。 哀しみの中の 御息所の歌 〜今日の御禊にお姿をちらりと見たばかり‥ 影をうつしただけで流れ去ってしまうみたらし川のつれなさに、…
心いる 方《かた》なりませば 弓張《ゆみはり》の 月なき空に 迷はましやは 藤花の宴の夜、 朧月夜の姫君を探し当てた源氏の君の歌 〜本当に深くご執心でいらっしゃるのならば、 たとえ月が出ていない空でも 迷うことがありましょうか。 【第8帖 花宴 はなの…
梓弓いるさの山に惑うかな ほの見し月の影を見ゆると 右大臣家の藤花の宴の日、 ため息をつく姫君の手をとらえて‥by 源氏の君 〜月の入る いるさの山の周辺で うろうろと迷っています かすかに見かけた月の影(姫君)を また見ることができようかと 【第8帖 …
わが宿の 花しなべての 色ならば 何かはさらに 君を待たまし 藤花の宴に 源氏を招待した右大臣が源氏に送った歌 〜わたしの邸の藤の花が世間一般の色をしているのならば どうしてあなたをお待ち致しましょうか (格別に美しいからこそ、あなたをお招きしたの…
世に知らぬ ここちこそすれ 有明の 月の行方《ゆくへ》を 空にまがへて 「草の原をば」と言った 姫を思い浮かべながら 扇に書いた源氏の歌 〜今までに味わったことのない切ない気持ちがします。 有明の月の行方を途中で見失ってしまって 【第8帖 花宴(はな…
何《いづ》れぞと 露のやどりを わかむ間に 小笹《こざさ》が原に 風もこそ吹け 小笹が原は世間、風 は評判・噂を意味します 私を探さないでしょう?という 朧月夜の姫君に対して源氏の君の返歌 〜名前をうかがっていないと、 どれが 露のような はかないあな…
うき身世に やがて消えなば 尋ねても 草の原をば 訪はじとや思ふ 源氏の君に 袖をとらえられた朧月夜の姫君の歌 〜不幸せな身のまま 名前を明かさないでこの世から死んでしまったなら 名乗らなかったからといって、 あなたは 草の根を分けてでも 私を尋ねて…
深き夜の 哀れを知るも 入る月の おぼろげならぬ 契りとぞ思ふ 朧月夜に似るものぞなきと詠いながら来た女君に by 源氏の君 〜趣深い春の夜更けの情趣をご存知でいられるのも 山の端に入る月のせいでしょう 貴女と私の縁は、 前世からの浅からぬ御縁があった…
大かたに 花の姿を見ましかば つゆも心の おかれましやは 詩を披露する美しい源氏をご覧になった藤壺の宮が 思い浮かべた歌 〜純粋な気持ちで 花のように美しいお姿を拝するのであったなら 少しも気兼ねなど いらなかっただろうに。 【第8帖 花宴 はなのえん…
打ち払ふ 《そで》も露けき常夏に 嵐《あらし》吹き添ふ秋も来にけり 〜床に積もる塵を払う袖も涙に濡れている常夏(私)の身の上に 荒く吹く風の吹きつける秋までもが やって来ました。 【第2帖 箒木 ははきぎ 私がひそかに情人にした女というのは、 見捨て…
咲きまじる 花は何《いづ》れと わかねども なほ常夏《とこなつ》に しくものぞなき 〜庭にいろいろ咲いている花はいずれも皆美しいが やはり常夏の花のあなたに及ぶ美しいものはない。 【第2帖 箒木 ははきぎ】 久しく訪《たず》ねて行かなかった時分に、 …
山がつの 垣《かき》は荒るとも をりをりに 哀れはかけよ 撫子の露 〜山家の垣根は荒れていても時々は かわいがってやってください撫子の花を ✳︎ 身分の低い 私のもとにおいでにならなくても構いませんが、 せめて娘(撫でていた子 ナデシコ)だけはかわいが…
結びつる 心も深き 元結ひに 濃き紫の色し褪せず 〜深く心をこめた元結いです、 濃い紫色がいつも濃い紫色が褪せなければよいのですが。 結婚を約束した心を深く結びこめた、この元結いです。 源氏の君のお心変わりがなく娘と長く添い遂げてくれれば、 どん…
荒き風 ふせぎし蔭の 枯れしより 小萩がうへぞ 静心な (源氏の祖母 桐壺の母 按察使大納言 あぜちだいなごんの北の方) 荒い風を防いでいた木が枯れてからは 小萩の身の上が気がかりでなりません 厳しい世間の風当を防いでいた母君の桐壺の更衣が亡くなって…
君にかく 引き取られぬる 帯なれば かくて絶えぬる 中とかこたん 〜あなたにこのように取られてしまった帯ですから こんな具合に仲も切れてしまったものとしましょうよ 逃れることはできませんよ。 ✳︎ 女の所で解いた帯に他人の手が触れると その恋は解消し…
中絶えば かごとや負ふと 危ふさに 縹《はなだ》の帯は とりてだに見ず 〜もし、あなたと源典侍の仲が絶えたら、 私に帯を取られたせいだと恨み言を言われたりしないかと心配なので この縹色(はなだいろ)の帯に手を触れることもしませんし 関係もありませ…
荒《あれ》だちし 波に心は騒がねど よせけん 磯《いそ》を いかが恨みぬ (頭中将乱入騒ぎで ) 破いたまま忘れていた指貫と帯を持たせてくれた 源典侍に by 源氏の君 〜荒々しく暴れた波(頭中将)には驚かないが その彼を寄せつけたあなた(磯)を どうし…
恨みても 云《い》ひがひぞなき 立ち重ね 引きて帰りし 波のなごりに 密会中に頭中将が乱入 装束を破いたまま帰った二人の忘れ物を届けてくれた源典侍の歌 〜恨んでも何の甲斐もありません。 次々とやって来ては帰っていったお二人の波の後では 【第7帖 紅…
隠れなき ものと知る知る夏衣 きたるをうすき 心とぞ見る 〜あなたと この女性との仲まで世間に知られてしまうのを 承知の上でやってきて、 夏衣を着るとは 何と薄情で浅薄なお気持ちかと思いますよ。 (薄い夏の衣では、その下の衣の色を隠せないので 隠し…
包むめる 名や洩《も》り出《い》でん 引きかはし かくほころぶる 中の衣に 源典侍との密会中に頭中将に踏み込まれ 装束も破れた時の源氏の君に by 頭中将 〜隠そうとしている浮名も洩れ出てしまいましょう、 引っ張り合って ほころんでしまった衣のように、…
人妻は あなわづらはし 東屋の まやのあまりも 馴《な》れじとぞ思ふ 源典侍の誘いに対しての源氏の歌 〜人妻は厄介なことです。 東屋の真屋の軒先に立ち馴れぬように、 あなたには あまり馴れ馴れしく親しまないようにしよう。 【第7帖 紅葉賀】 清涼殿の音…
立ち濡《ぬ》るる 人しもあらじ 東屋に うたてもかかる 雨そそぎかな 催馬楽「東屋」を歌いながら近づく源氏を招く源典侍(げんのないしのすけ)の歌 〜濡れて雨宿りに来る人もいない粗末な東屋に、 嫌な雨が降りそそぎます。 【第7帖 紅葉賀】 清涼殿の音楽…
笹《ささ》分けば 人や咎《とが》めん いつとなく 駒馴《な》らすめる 森の木隠れ 源典侍(げんのないしのすけ)の誘惑をかわす源氏の君の歌 〜笹を分けて入って行ったら人が注意するでしょう。 いつでも馬を懐けている森の木陰では厄介ですからね。 あなた…
君し来《こ》ば 手馴《てな》れの駒《こま》に 刈り飼はん 盛り過ぎたる下葉なりとも 色気たっぷりに源典侍(げんのないしのすけ)が源氏を誘う 〜あなたがいらしたなら、 飼い馴れた ご愛馬のつもりで草を刈ってあげましょう。 盛りを過ぎてしまった下草で…
森の下草老いぬれば 駒《こま》もすさめず 刈る人もなし 源典侍が源氏に語った 古今集の読み人知らずの歌 下の和歌は、これ ✴︎大荒木の 森の下草老いぬれば 駒もすさめず 刈る人もなし 〜大荒木の森に生えている下草も成長しすぎてしまった。 馬も喜んで食べ…
袖《そで》濡《ぬ》るる 露のゆかりと思ふにも なほうとまれぬ やまと撫子 苦しい胸の内を訴える源氏への返歌 by 藤壺の宮 〜あなたの袖を濡らしている露のゆかり‥ あなたとの縁と思うにつけても やはり疎ましくなれない大和撫子(若宮)です 【第7帖 紅葉賀…
よそへつつ 見るに心も 慰まで 露つゆけさまさる 撫子なでしこの花 源氏は 藤壺の宮への、苦しい胸の内を書いた歌を王命婦に預ける 〜なでしこの花を見るにつけ、愛しい御子と結びついてしまいます。 気持ちは慰められることなく、 心は晴れるどころか、涙が…
見ても思ふ 見ぬはたいかに 歎《なげ》くらん こや世の人の 惑ふてふ闇《やみ》 嘆く源氏の君に by 藤壺の宮の苦悩を伝える王命婦 〜御子をご覧になる藤壺の宮様も物思いに沈んでいらっしゃいます。 若宮をご覧にならない源氏の君もまた どんなにかお嘆きの…
いかさまに 昔結べる契りにて いかさまに 昔結べる 契りにて この世にかかる 中の隔てぞ 秘密の恋を知る王命婦に by 新皇子 拝見を望む源氏の君 〜いったい前世で 私たちははいったいどのような約束を交わしたのだろうか。 この世では もう会えない仲なので…