第6帖 末摘花(すえつむはな)源氏物語
くれなゐの 花ぞあやなく 疎《うと》まるる 梅の立枝《たちえ》は なつかしけれど 二条院で 紫の上とくつろいでいるときの源氏の君の歌 〜赤い花はわけもなく嫌な感じがする。 梅の立ち枝に咲いた花は慕わしく思われるのだけど 【第6帖 末摘花】 源氏はまた…
「逢はぬ夜を 隔つる中の衣手《ころもで》に 重ねていとど 身も沁《し》みよとや」 〜幾夜も会わずにいて隔たってしまった私たちの仲ですが、 独り寝をする衣の袖に、さらに 衣の袖を重ねて より疎遠になれとおっしゃるのですか 【第6帖 末摘花】 翌日命婦が…
くれなゐの ひとはな衣《ごろも》うすくとも ひたすら朽たす 名をし立てずば 末摘花の姫君を心配して詠んだ歌 by 大輔の命婦 〜紅色に一度染めた程度の淡い色あいの衣は色が薄いように、 君の愛情は浅いといっても、 ただ願うのは 姫君の御名を貶めるような…
なつかしき 色ともなしに 何にこの 末摘花《すゑつむはな》を 袖《そで》に触れけん 〈常陸宮の姫君が末摘花(ベニバナ)とよばれるきっかけになった歌〉 by 源氏の君 〜心惹かれる色(紅花の赤色)というわけでもないのに、 どうしてこんな、末摘花のような…
唐衣《からごろも》 君が心のつらければ 袂《たもと》はかくぞ そぼちつつのみ 末摘花の歌 もらって困惑する源氏の君 〜 あなたの心が薄情なので、 わたしの袂はこのように 涙で濡れ続けてばかりです。 【第6帖 末摘花】 「常陸の宮から参ったのでございます…
ふりにける 頭《かしら》の雪を 見る人も 劣らずぬらす 朝の袖かな 門を開ける白髪の翁を見て詠んだ歌 by 源氏の君️ 〜年を経て白髪になった老人の頭に 降り積もった雪を見る人‥ それに 劣らず、今朝は涙で袖を濡らすことよ。 【第6帖 末摘花】 車の通れる門…
朝日さす 軒のたるひは 解けながら などかつららの 結ぼほるらん 初めて末摘花の顔を見た時の歌 by 源氏の君⛄️ 〜朝日がさす軒にさがった つららは溶けておりますのに、 どうしてあなたのお心は 凍ったままとけずにいるのでしょう。 【第6帖 末摘花】 何とも…
晴れぬ夜の 月待つ里を思ひやれ 同じ心に ながめせずとも (源氏への返歌に悩む末摘花の姫君のために) 乳母子の侍従の君が代作した歌 〜晴れない夜に月が出るのを待っている私のことを思い遣ってください。 あなたが同じ心で物思いに沈まないまでも 【第6帖…
夕霧の晴るる けしきもまだ見ぬに いぶせさ添ふる 宵《よひ》の雨かな☔️ 結婚したばかりの末摘花の姫君に by源氏の君✉️ 〜夕霧が晴れる気配もまだ見ないうちに鬱陶しさが さらに加わる宵の雨だなあ。 【第6帖 末摘花】 雨が降っていた。 こんな夜にちょっと…
云《い》はぬをも 云ふに勝《まさ》ると 知りながら 押しこめたるは 苦しかりけり 末摘花の姫君に by 源氏の君 〜何もおっしゃらないのは、 おっしゃる以上の思いがあるのだと知ってはおりますが、 そうして黙ってばかりいらっしゃるのは 苦しいことですよ。…
鐘つきて とぢめんことは さすがにて 答へまうきぞ かつはあやなき 源氏の君に by 末摘花の乳母子で侍従という若い女房 〜鐘をついて終了するようなことは、 そうはいってもやはり、いたしかねて… とはいえその一方でお返事もしたくないというのは、 我なが…
いくそ度《たび》 君が沈黙《しじま》に 負けぬらん 物な云《い》ひそと 云はぬ頼み 末摘花の姫君に by 源氏の君 〜これまで幾度あなたの沈黙に わたしは引き下がってきたことでしょう 。 話しかけないでくださいとまで、 おっしゃらないのを あてにしてきま…
里分かぬ かげを見れども 行く月の いるさの山を 誰《たれ》かたづぬる by 尾行してきた頭中将に by 源氏の君 〜どこの里も分け隔てない月の光をみることはあっても 空を渡ってゆく月が入ってゆく先の いるさ山を尋ねる人があるだろうか (君も かなりの物好…
源氏を尾行する頭中将 もろともに 大内山は出《い》でつれど 入る方見せぬ いざよひの月 by 頭中将 〜一緒に内裏を出たのに、 なかなか入るところを見せようとしない 十六夜の月のようなあなたでしたね 〜サッと行ってしまった冷たさに対し 逆にお送りすると…