第19帖 薄雲(うすぐも)源氏物語
いさりせし 影忘られぬ 篝火は 身の浮舟や 慕ひ来にけむ 源氏の君に by 明石の上 〜あの明石の浦の漁り火が思い出されますのは わが身の憂さを追って ここまでやって来たのでしょうか 【源氏物語618 第19帖 薄雲49 完】 住み馴れるにしたがって ますます凄い…
君もさは 哀れをかはせ 人知れず わが身にしむる秋の夕風 斎宮の女御に by 源氏の君 〜あなたもそれでは情趣を交わしてください、 誰にも知られず 自分ひとりでしみじみ 身にしみて感じている 秋の夕風ですから 【 第19帖 薄雲45】 お言葉尻《じり》の しど…
入り日さす 峯にたなびく 薄雲は 物思ふ袖《そで》に色やまがへる by 源氏の君 〜入り日が射している峰の上に たなびいている薄雲は 悲しんでいるわたしの喪服の袖の色に似せたのだろうか 源氏は二条の院の庭の桜を見ても、 故院の花の宴の日のことが思われ…
船とむる遠方人《をちかたびと》のなくばこそ 明日帰りこん夫《せな》とまち見め by 紫の上 大堰の山荘の明石の上の元に おしゃれして行こうとする源氏への歌❄️ 〜あなたをお引き止めするあちらの方がいらっしゃらないのなら 明日帰ってくるあなたと思って…
生《お》ひ初《そ》めし根も深ければ 武隈《たけくま》の松に小松の千代を並べん by 源氏の君 生まれてきた因縁も深いのだから いづれ一緒に暮らせるようになりましょう 【源氏物語578 第19帖 薄雲9】 姫君は無邪気に父君といっしょに車へ早く乗りたがった。…
末遠き 二葉の松に 引き分かれ いつか木高き かげを見るべき by 明石の上 幼い姫君にお別れして いつになったら 立派に成長した姿を見ることができるのでしょう 【源氏物語578 第19帖 薄雲9】 姫君は無邪気に父君といっしょに車へ早く乗りたがった。 車の寄…
雪深き 深山《みやま》のみちは 晴れずとも なほふみ通へ跡たえずして 雪が深いので 奥深い山里への道は通れなくなろうとも どうか手紙だけはください、 跡の絶えないように 明石姫君の乳母へ by 明石の上 【源氏物語576 第19帖 薄雲7】 こんなことを毎日言…
雪間なき 吉野《よしの》の山を たづねても 心の通ふ 跡絶えめやは 雪の消える間もない吉野の山奥であろうとも 必ず訪ねて行って 心の通う手紙を絶やすことは決してしません 明石の上に by 明石姫君の乳母(宣旨の娘) 【源氏物語576 第19帖 薄雲7】 こんな…