2023-09-17から1日間の記事一覧
あさみにや 人は下《お》り立つ わが方《かた》は 身もそぼつまで 深きこひぢを 六条御息所の「袖濡るる‥」の歌の返事 源氏は直接お返事がしたかったとも伝える。 〜袖しか濡れないとは浅い所にお立ちだからでしょう わたしは全身ずぶ濡れになるほど深い泥(…
袖《そで》濡《ぬ》るる こひぢとかつは 知りながら 下《お》り立つ田子の 自《みづか》らぞ憂《う》き 源氏の例の上手な口実だとわかっていながら書いた 六条御息所の返事 〜袖が濡れる恋の路と知っているのに、 泥の中に踏み込む農民のように踏み込んでし…
空蝉の 身をかへてける 木のもとに なほ人がらの なつかしきかな 源氏が 薄衣を残して逃げ去った空蝉を想い 無駄書きのようにして書いた歌 〜蝉が抜け殻だけを残した木の下にたたずんでいると、 やはりあの、薄衣だけを残していった女の人柄が心惹かれる。 …
かざしける 心ぞ仇《あだ》に思ほゆる 八十氏《やそうぢ》人に なべてあふひを 〜たくさんの人々に誰彼となく靡くものですから その葵をかざしているあなたの心心こそ 当てにならないものと思いますよ。 【第9帖 葵 あおい】 今日も町には隙間《すきま》なく…
くやしくも 挿《かざ》しけるかな 名のみして 人だのめなる 草葉ばかりを 祭りの日に源氏に場所を譲る源典侍 源氏からのそっけない歌への返歌 〜ああ悔しい、 葵の祭り‥逢う日と 当てに楽しみにしていたのに。 期待を抱かせるだけの草葉に過ぎないのですか。…
はかなしや 人のかざせる あふひ故《ゆゑ》 神のしるしの 今日を待ちける 祭りの日 源氏の車に 場所を譲る源典侍(げんないしのすけ)の歌 〜あら情けなや、 他の方が葵をかざして乗り合わせているとは。 神の許す今日の機会を待ちわびていましたのに。 【第…
千尋とも いかでか知らん 定めなく 満ち干《ひ》る潮の のどけからぬに 紫の姫君の髪そぎをした源氏 その時の海松房(みるぶさ)の歌に対する姫君の返歌 〜千尋も深い愛情を誓われてもどうして分りましょう 潮は 満ちたり引いたり定めがありません。 あなた…
はかりなき 千尋の底の海松房《みるぶさ》の 生《お》ひ行く末は われのみぞ見ん 紫の姫君の髪そぎの折の源氏の君の歌 〜限りなく深い千尋の海の底に生える海松のように 豊かに成長してゆく黒髪は わたしだけが見るとしましょう。 【第9帖 葵 あおい】 きれ…
影をのみ みたらし川の つれなさに 身のうきほどぞ いとど知らるる 葵祭の日☘️源氏の君は 六条御息所の存在に気がつかない。 哀しみの中の 御息所の歌 〜今日の御禊にお姿をちらりと見たばかり‥ 影をうつしただけで流れ去ってしまうみたらし川のつれなさに、…
心いる 方《かた》なりませば 弓張《ゆみはり》の 月なき空に 迷はましやは 藤花の宴の夜、 朧月夜の姫君を探し当てた源氏の君の歌 〜本当に深くご執心でいらっしゃるのならば、 たとえ月が出ていない空でも 迷うことがありましょうか。 【第8帖 花宴 はなの…
梓弓いるさの山に惑うかな ほの見し月の影を見ゆると 右大臣家の藤花の宴の日、 ため息をつく姫君の手をとらえて‥by 源氏の君 〜月の入る いるさの山の周辺で うろうろと迷っています かすかに見かけた月の影(姫君)を また見ることができようかと 【第8帖 …
わが宿の 花しなべての 色ならば 何かはさらに 君を待たまし 藤花の宴に 源氏を招待した右大臣が源氏に送った歌 〜わたしの邸の藤の花が世間一般の色をしているのならば どうしてあなたをお待ち致しましょうか (格別に美しいからこそ、あなたをお招きしたの…
世に知らぬ ここちこそすれ 有明の 月の行方《ゆくへ》を 空にまがへて 「草の原をば」と言った 姫を思い浮かべながら 扇に書いた源氏の歌 〜今までに味わったことのない切ない気持ちがします。 有明の月の行方を途中で見失ってしまって 【第8帖 花宴(はな…