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🪻源氏物語&古典blog 和歌&漢文🪻

源氏物語、枕草子をはじめ古典の中の 美しい和歌 漢文を紹介してまいります🌸

🪷聞夜砧 (夜の砧を聞く)白居易『白氏文集』より〜夕顔を失った源氏が 五条の家で二人で過ごしていた時に砧の音をを思い出しながら歌った漢詩🪷【第4帖 夕顔】

八月九月

正長夜《まさにながきよ》

千声万声《せんせいばんせい》

無止時《やむときなし》

by白居易

〜『白氏文集』「聞夜砧」より

 

【第4帖 夕顔】

空は曇って冷ややかな風が通っていた。

寂しそうに見えた源氏は、

『見し人の 煙を雲と ながむれば 夕《ゆふべ》の空も むつまじきかな』

と独言《ひとりごと》のように言っていても、

返しの歌は言い出されないで、

右近は、こんな時に二人そろっておいでになったらという思いで

胸の詰まる気がした。

源氏はうるさかった砧《きぬた》の音を思い出しても

その夜が恋しくて、

「八月九月|正長夜《まさにながきよ》、

千声万声《せんせいばんせい》無止時《やむときなし》」

と歌っていた。

🪷ぜひ、全文もご覧ください🪷

 

(きぬた)は、洗濯した布を生乾きの状態で台にのせ、

棒や槌でたたいて柔らかくしたり、皺をのばすための道具です。

また、この道具を用いた布打ちの作業をしめすこともあります。

源氏のような貴公子が、布を叩く音なんが耳にしたことあるわけないやん、

とツッコミ入れそうになりますが、

実は、砧の音を聞く機会はあったのよ。

それは、夕顔の君のおうち🏠

惟光のお母さんの家のお隣(^◇^;)

変装して顔隠して、女性の元にいそいそと通う‥

令和の今なら 立派なお変態様認定するわよ💦

そもそも、身元のわからん人と恋人同士になるなんて

夕顔の君もセキュリティがばがばすぎやしませんか?( ̄(工) ̄)

いやいや、そこら辺は、きちんとしたもので

おおよそ 誰かなんぞは予測はついてたみたいだけどね。

 

源氏の君は、この不思議な関係と、

優しく柔らかい少女のような、そのくせ

✳︎ イケメンと聞いてたけど、案外 たいしたことはないわね🌹

なんて歌で 挑発したりする夕顔の魅力にどっぷりハマった。

二人が五条の家で過ごしていた時に、

近所のおじさんの声や、砧を打つ音が聞こえてきた。

まさに、砧の音は、

その時はうるさいと思ったけれど、

夕顔の君との幸せな時間の象徴だったのかも😢

思い出しながら、

白居易(白楽天)の律詩をつぶやく源氏の君‥

切ない場面です。

↓✳︎この和歌です🌿

白居易「聞夜砧」(夜の砧を聞く)

🪷聞夜砧

誰家思婦秋擣帛 

月苦風凄砧杵悲 

八月九月正長夜 

千聲萬聲無了時

應到天明頭盡白 

一聲添得一莖絲

 

誰が家の思婦か秋に帛(きぬ)を擣(う)つ

月苦(さ)え風凄(すさまじ)砧杵(ちんしょ)悲し。

八月九月 正(まさ)に長夜、

千声万声了(や)む時なし。

応(まさ)に天明に到らば頭尽(ことごと)く白かるべし、

一声添え得たり一茎の糸。

 

遠い夫を思う、どこの家の妻なのか、

秋の夜に衣をうっているのは。


月光は冷え冷えと澄み、風は凄まじく吹いて、

砧の音が悲しく響く。


八月九月は、まことに夜が長い。


千遍万遍と、その音の止む時はない。


明け方に至れば、私の髪はすっかり白けているだろう。
砧の一声が、私の白髪を一本増やしてしまうのだ。

 

八月の十五夜であった。

明るい月光が板屋根の隙間《すきま》だらけの家の中へさし込んで、

狭い家の中の物が源氏の目に珍しく見えた。

もう夜明けに近い時刻なのであろう。

 

近所の家々で貧しい男たちが目をさまして高声で話すのが聞こえた。

「ああ寒い。

 今年こそもう商売のうまくいく自信が持てなくなった。

 地方廻りもできそうでないんだから心細いものだ。

 北隣さん、まあお聞きなさい」

 などと言っているのである。

 

哀れなその日その日の仕事のために起き出して、

そろそろ労働を始める音なども近い所でするのを

女は恥ずかしがっていた。

気どった女であれば死ぬほどきまりの悪さを感じる場所に違いない。

 

でも夕顔はおおようにしていた。

人の恨めしさも、自分の悲しさも、体面の保たれぬきまり悪さも、

できるだけ思ったとは見せまいとするふうで、

自分自身は貴族の子らしく、娘らしくて、

ひどい近所の会話の内容もわからぬようであるのが、

恥じ入られたりするよりも感じがよかった。

 

ごほごほと雷以上の恐い音をさせる唐臼《からうす》なども、

すぐ寝床のそばで鳴るように聞こえた。

源氏もやかましいとこれは思った。

けれどもこの貴公子も何から起こる音とは知らないのである。

大きなたまらぬ音響のする何かだと思っていた。

 

そのほかにもまだ多くの騒がしい雑音が聞こえた。

白い麻布を打つ砧《きぬた》のかすかな音もあちこちにした。

空を行く雁《かり》の声もした。

秋の悲哀がしみじみと感じられる。

 

庭に近い室であったから、

横の引き戸を開けて二人で外をながめるのであった。

小さい庭にしゃれた姿の竹が立っていて、

草の上の露はこんなところのも

二条の院の前栽《せんざい》のに変わらずきらきらと光っている。

 

虫もたくさん鳴いていた。

壁の中で鳴くといわれて人間の居場所に

最も近く鳴くものになっている蟋蟀《こおろぎ》でさえも

源氏は遠くの声だけしか聞いていなかったが、

ここではどの虫も

耳のそばへとまって鳴くような風変わりな情趣だと源氏が思うのも、

夕顔を深く愛する心が何事も悪くは思わせないのであろう。

🪷ぜひ、全文もご覧ください🪷

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