逢《あ》ふまでの 形見ばかりと 見しほどに
ひたすら袖《そで》の 朽ちにけるかな
〜再び逢う時までの形見の品というくらいに思い持っていましたが、
そうしている内にひたすら涙で小袖の袖が濡れて、
朽ちてしまいましたよ。
【第4帖 夕顔】
伊予介《いよのすけ》が十月の初めに四国へ立つことになった。
細君をつれて行くことになっていたから、
普通の場合よりも多くの餞別《せんべつ》品が源氏から贈られた。
またそのほかにも秘密な贈り物があった。
ついでに空蝉《うつせみ》の脱殻《ぬけがら》と言った
夏の薄衣《うすもの》も返してやった。
『逢《あ》ふまでの 形見ばかりと
見しほど ひたすら袖《そで》の 朽ちにけるかな』
細々《こまごま》しい手紙の内容は省略する。
贈り物の使いは帰ってしまったが、
そのあとで空蝉は小君《こぎみ》を使いにして
小袿《こうちぎ》の返歌だけをした。
『蝉の羽もたち 変へてける 夏ごろも
かへすを見ても 音《ね》は泣かれけり』
源氏は空蝉を思うと、
普通の女性のとりえない態度をとり続けた女とも
これで別れてしまうのだと歎《なげ》かれて、
運命の冷たさというようなものが感ぜられた。
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