さしぐみに 袖 濡らしける 山水に すめる心は 騒ぎやはする🌿
源氏の君へ by 北山の僧都🪷
〜あなたが 不意に来られてお袖を濡らされたという山の水に、
心を澄まして住んでいるわたしは心騒ぐことはありません。
💐第4帖 若紫💐
「それは非常にうれしいお話でございますが、
何か話をまちがえて聞いておいでになるのではないかと思いますと、
どうお返辞を申し上げてよいかに迷います。
私のような者一人をたよりにしております子供が一人おりますが、
まだごく幼稚なもので、どんなに寛大なお心ででも、
将来の奥様にお擬しになることは無理でございますから、
私のほうで御相談に乗せていただきようもございません」
と尼君は言うのである。
「私は何もかも存じております。
そんな年齢の差などはお考えにならずに、
私がどれほどそうなるのを望むかという熱心の度を御覧ください」
源氏がこんなに言っても、
尼君のほうでは
女王の幼齢なことを知らないでいるのだと思う先入見があって
源氏の希望を問題にしようとはしない。
僧都《そうず》が源氏の部屋のほうへ来るらしいのを機会に、
「まあよろしいです。
御相談にもう取りかかったのですから、 私は実現を期します」
と言って、
源氏は屏風《びょうぶ》をもとのように直して去った。
もう明け方になっていた。
法華《ほっけ》の三昧《ざんまい》を行なう堂の
尊い懺法《せんぽう》の声が山おろしの音に混じり、
滝がそれらと和する響きを作っているのである。
『吹き迷ふ 深山《みやま》おろしに 夢さめて 涙催す 滝の音かな』
これは源氏の作。
「『さしぐみに袖|濡らしける 山水に すめる心は 騒ぎやはする』
もう馴れ切ったものですよ」
と僧都は答えた。
🪷ぜひ、全文もご覧ください🪷
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