2023-10-03から1日間の記事一覧
生ける世の 別れを知らで 契りつつ 命を人に限りけるかな 月の光の中、 紫の上は美しく座っている。 悲しみの中の源氏の君の歌 〜生きている間にも 生き別れというものがあるとは知らずに 命のある限りは一緒にと 信じていましたよ。 【第12帖 須磨 すま】 …
咲きてとく 散るは憂《う》けれど 行く春は 花の都を 立ちかへり見よ 王命婦(おうみょうぶ)が東宮に変わって代作した歌 〜咲いたかと思うと すぐに散ってしまう桜の花は悲しいけれども 再び都に戻って来て春の都を御覧ください。 【第12帖 須磨 すま】 咲…
別れしに 悲しきことは 尽きにしを またもこの世の 憂さはまされる 藤壺の宮の歌に対しての 源氏の君の変化 〜父院にお別れした折に 悲しい思いを尽くしたと思ったはずなのに またも この世のつらさが増すことです。 【第12帖 須磨 すま】 「こういたしまし…
見しは無く 有るは悲しき 世のはてを そむきしかひも なくなくぞふる 悲しみにくれた藤壺の宮の歌 〜お連れ添い申した桐壺院は亡くなられ、 生きておいでの方は 悲しいお身の上の世の末を 出家した甲斐もないまま わたしは泣きの涙で暮らしています 【第12帖…
いつかまた 春の都の 花を見ん 時うしなへる山がつにして 東宮(藤壺の宮と源氏の子)に送った 桜の花の散った枝に付けられた源氏の手紙 いつか再び 春の都の花盛りを見ることができましょうか 時流に見放された✴︎山賤やまがつのわが身となって。 ✴︎山仕事を…
亡《な》き影や いかで見るらん よそへつつ 眺《なが》むる月も 雲隠れぬる 父帝の昔のままのお姿が幻に見えた。その時の源氏の君の歌 〜亡き父上は どのように御覧になっていらっしゃることだろうか 父上のように思って見ていた月の光も 雲に隠れてしまった…