友千鳥 諸声《もろごゑ》に鳴く 暁は
一人寝覚《ねざ》めの床《とこ》も頼もし
明け方に千鳥が身に沁む声で鳴いた。
その時の源氏の歌🌊
〜友千鳥が声を合わせて鳴いている明け方は
ひとり寝から目覚めて泣くわたしも
心強い気がする
【第12帖 須磨 すま】
源氏は
「胡角一声霜後夢《こかくいっせいそうごのゆめ》」と
王昭君《おうしょうくん》を歌った詩の句が口に上った。
月光が明るくて、
狭い家は奥の隅々《すみずみ》まで顕《あら》わに見えた。
深夜の空が縁側の上にあった。
もう落ちるのに近い月がすごいほど白いのを見て、
「唯是西行不左遷《ただこれにしへゆくさせんにあらず》」
と源氏は歌った。
何方《いづかた》の 雲路にわれも 迷ひなん
月の見るらんことも恥《はづ》かし
とも言った。
例のように源氏は終夜眠れなかった。
明け方に千鳥が身にしむ声で鳴いた。
友千鳥 諸声《もろごゑ》に鳴く 暁は
一人寝覚《ねざ》めの床《とこ》も頼もし
だれもまだ起きた影がないので、
源氏は何度もこの歌を繰り返して唱えていた。
まだ暗い間に手水《ちょうず》を済ませて
念誦《ねんず》をしていることが
侍臣たちに新鮮な印象を与えた。
この源氏から離れて行く気が起こらないで、
仮に京の家へ出かけようとする者もない。
唯是西行不左遷《ただこれにしへゆくさせんにあらず》菅原道真公の作です。ぜひこちらもご覧ください。
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