世語りに 人やつたへん 類《たぐ》ひなく
憂《う》き身をさめぬ 夢になしても🪷
源氏の君に by 藤壺の宮🌹
〜世の語り草として、人が噂しますよ。
この上もなく辛い私の身を、夢の中のこととしても、
🪷第5帖 若紫🪷
源氏の恋の万分の一も告げる時間のあるわけはない。
永久の夜が欲しいほどであるのに、
逢わない時よりも恨めしい別れの時が至った。
見てもまた逢ふ夜|稀《まれ》なる夢の中《うち》に
やがてまぎるるわが身ともがな
涙にむせ返って言う源氏の様子を見ると、
さすがに宮も悲しくて、
『世語りに 人やつたへん 類《たぐ》ひなく
憂《う》き身をさめぬ 夢になしても』
とお言いになった。
宮が煩悶《はんもん》しておいでになるのも道理なことで、
恋にくらんだ源氏の目にももったいなく思われた。
源氏は二条の院へ帰って泣き寝に一日を暮らした。
手紙を出しても、例のとおり御覧にならぬという
王命婦の返事以外には得られないのが非常に恨めしくて、
源氏は御所へも出ず二、三日引きこもっていた。
🪷ぜひ、全文もご覧ください🪷
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