大方《おほかた》の秋の別れも悲しきに
鳴く音《ね》な添へそ野辺《のべ》の松虫
晩秋の夜明け 悲しみ過ぎた二人の恋人の別れの時‥
六条御息所の歌🪷
〜ただでさえ
秋の別れというものは悲しいものなのに
さらに そこに鳴鳴く声を添えて
悲しませてくれるな野辺の松虫よ
若い殿上役人が始終二、三人連れで来ては
ここの文学的な空気に浸っていくのを喜びにしているという、
この構えの中のながめは源氏の目にも確かに艶なものに見えた。
あるだけの恋の物思いを
双方で味わったこの二人のかわした会話は写しにくい。
ようやく白んできた空がそこにあるということも
わざとこしらえた背景のようである。
暁の別れはいつも露けきを
こは世にしらぬ秋の空かな
と歌った源氏は、
帰ろうとしてまた
女の手をとらえてしばらく去りえないふうであった。
冷ややかに九月の風が吹いて、
鳴きからした松虫の声の聞こえるのも
この恋人たちの寂しい別れの伴奏のようである。
何でもない人にも身にしむ思いを与える
こうした晩秋の夜明けにいて、
あまりに悲しみ過ぎたこの人たちはかえって実感を
よい歌にすることができなかったと見える。
大方《おほかた》の秋の別れも悲しきに
鳴く音《ね》な添へそ野辺《のべ》の松虫
御息所の作である。
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