2023-09-24から1日間の記事一覧
そのかみやいかがはありし 木綿襷《ゆふだすき》 心にかけて 忍ぶらんゆゑ 〜その昔 あなたと私の間が どうだったとおっしゃるのでしょうか。 木綿襷を心にかけて偲ぶと おっしゃるわけが分かりかねます。 【第10帖 賢木 さかき】 斎院のいられる加茂はここ…
かけまくもかしこけれどもそのかみの 秋思ほゆる木綿襷《ゆふだすき》かな 源氏は斎院に榊に木綿(ゆう)をかけて 神々しくした枝につけて送った 〜口に出して言うことは恐れ多いことですけれど その昔の秋のころのことが思い出されます 【第10帖 賢木 さか…
あさぢふの露の宿りに君を置きて 四方《よも》の嵐《あらし》ぞしづ心なき 源氏は紫の上に、情のこもった手紙を送る 〜浅茅生が生い茂る露のようにはかないこの世に あなたを置いてきたので 四方から吹きつける世間の激しい風を聞くにつけ 心が落ち着きませ…
風吹けば先《ま》づぞ乱るる色かはる 浅茅《あさぢ》が露にかかるささがに 源氏は紫の上に、手紙を送る。 紫の上は白い色紙に返事を書いて送った 〜浅茅生が生い茂る露のようにはかないこの世に あなたを置いてきたので 四方から吹きつける世間の激しい風を…
歎《なげ》きつつ 我が世はかくて 過ぐせとや 胸のあくべき 時ぞともなく 〜嘆きながら 一生をこのように過ごせというのでしょうか 夜が明けても 胸の思いの晴れる間もないのに。 【第10帖 賢木 さかき】 心から かたがた袖《そで》を 濡《ぬ》らすかな 明く…
心から かたがた袖を 濡らすかな 明くと教ふる 声につけても 許されぬ恋人たちの秘密の逢瀬 尚侍(ないしのかみ)の歌 〜あれこれと考えると心の底から悲しくて、 涙で袖を濡らすことです。 夜が明けることを告げる声を聞くにつけましても。 【第10帖 賢木 …
そのかみを今日《けふ》はかけじと思へども 心のうちに物ぞ悲しき 十六で皇太子の妃になって、二十で寡婦になり、 三十で今日また内裏へはいった‥六条御息所の歌 〜昔のことを今日は思い出すまいと堪えていたが 心の底では悲しい気持ちでいっぱいである。 【…
年暮れて 岩井の水も 氷とぢ 見し 人影の あせも行くかな 藤壺の中宮と源氏の君が院のご在世中の話をしておいでになった。 悲しみの中の王の命婦の歌 〜年が暮れて 岩井の水も凍りついて 見慣れていた人影も 見えなくなってゆきますこと。 【第10帖 賢木 さ…