2023-09-19から1日間の記事一覧
新しき 年ともいはず 降るものは ふりぬる人の 涙なりけり 新年になったとは申しても降りそそぐものは 年古りた母の涙でございます 【第9帖 葵 あおい】 宮様の挨拶を女房が取り次いで来た。 「今日だけはどうしても昔を忘れていなければならないと 辛抱して…
あまたとし 今日改めし色ごろも きては涙ぞ 降るここちす 新年、左大臣の北の方の宮様が源氏に衣装を贈った。 その時の源氏の歌 〜年来も元日毎に参っては 着替えをしてきた晴着ですが それを着ると今日は涙がこぼれる心地がします。 【第9帖 葵 あおい】 宮…
あやなくも 隔てけるかな 夜を重ね さすがに馴《な》れし 中の衣を 〜どういうわけで、 今まで床をへだてて寝ていたのでしょう。 夜を重ねてすっかり馴染んでいた私たちの仲なのに 【第9帖 葵 あおい】 つれづれな源氏は西の対にばかりいて、 姫君と扁隠《へ…
君なくて 塵《ちり》積もりぬる 床なつの 露うち払ひ いく夜 寝《い》ぬらん 「鴛鴦瓦冷霜花重」と書いてある所に、書かれていた源氏の歌 〜あなたが亡くなってから塵の積もった床に 涙を払いながら 私は 幾晩独り寝をしたことだろうか。 【第9帖 葵 あおい…
亡き魂《たま》ぞ いとど悲しき 寝し床《とこ》の あくがれがたき 心ならひに 亡き葵の上と源氏の君の部屋にあった源氏の歌 〜亡くなった人の魂もますます離れがたく 悲しく思っていることだろう 二人で寝た この床を わたしも離れがたく思うのだから 【第9…
秋霧に 立ちおくれぬと 聞きしより 時雨《しぐ》るる空も いかがとぞ思ふ 葵の上を亡くした源氏からの手紙に対し 式部卿の宮の姫君(朝顔の姫君)は お悔やみの文を送る 〜霧の立つ頃、 貴方は、奥方様に先立たれなさったとお聞き致しました。 それ以来 時雨…
わきてこの 暮《くれ》こそ袖は 露けけれ 物思ふ秋は あまた経ぬれど 妻の葵上を失い悲しみに暮れる源氏 きっと気持ちをわかってくださるだろうと、 式部卿の朝顔の姫君に送った歌 〜とりわけ今日の夕暮れは涙に袖を濡らしております 今までにも物思いのする…