初草の 生ひ行く末も 知らぬまに
いかでか露の 消えんとすらん🪷
若紫の祖母の尼君へ by 一人の名もなき女房🌼
〜萌え出したばかりの若草(のような姫君)が
成長していく将来もわからないうちに、
どうして露(尼君)は消えようとするのでしょうか。
🪷第5帖 若紫🪷
尼君は女の子の髪をなでながら、
「梳《す》かせるのもうるさがるけれどよい髪だね。
あなたがこんなふうにあまり子供らしいことで私は心配している。
あなたの年になればもうこんなふうでない人もあるのに、
亡くなったお姫さんは十二でお父様に別れたのだけれど、
もうその時には悲しみも何もよくわかる人になっていましたよ。
私が死んでしまったあとであなたはどうなるのだろう」
あまりに泣くので
隙見《すきみ》をしている源氏までも悲しくなった。
子供心にもさすがにじっとしばらく尼君の顔をながめ入って、
それからうつむいた。
その時に額からこぼれかかった髪がつやつやと美しく見えた。
『生《お》ひ立たん ありかも知らぬ 若草を
おくらす露ぞ 消えんそらなき』
一人の中年の女房が感動したふうで泣きながら、
『初草の 生ひ行く末も 知らぬまに
いかでか露の 消えんとすらん』 と言った。
🪷ぜひ、全文もご覧ください🪷
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