神垣《かみがき》は しるしの杉も なきものを
いかにまがへて 折れる榊
〜ここには人の訪ねる目印の杉もないのに
どうお間違えになって折った榊なのでしょう
【第10帖 賢木(さかき)】
どうすればよいかと御息所は迷った。
潔斎所《けっさいじょ》についている神官たちに
どんな想像をされるかしれないことであるし、
心弱く面会を承諾することによって、
またも源氏の軽蔑を買うのではないかと
躊躇《ちゅうちょ》はされても、
どこまでも冷淡にはできない感情に負けて、
歎息《たんそく》を洩《も》らしながら座敷の端のほうへ
膝行《いざっ》てくる御息所の様子には艶な品のよさがあった。
源氏は、
「お縁側だけは許していただけるでしょうか」
と言って、上に上がっていた。
長い時日を中にした会合に、
無情でなかった言いわけを散文的に言うのもきまりが悪くて、
榊《さかき》の枝を少し折って手に持っていたのを、
源氏は御簾《みす》の下から入れて、
「私の心の常磐《ときわ》な色に自信を持って、
恐れのある場所へもお訪ねして来たのですが、
あなたは冷たくお扱いになる」
と言った。
神垣《かみがき》は しるしの杉も なきものを
いかにまがへて 折れる榊ぞ
御息所はこう答えたのである。
少女子《おとめご》が あたりと思へば 榊葉の
香《か》を なつかしみとめてこそ折れ
と源氏は言ったのであった。
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