2023-10-06から1日間の記事一覧
常世《とこよ》出《い》でて 旅の空なる かりがねも 列《つら》に後《おく》れぬ ほどぞ慰む 伊予介の息子 空蝉の義理の息子の 前右近丞《ぜんうこんのじょう》の歌 〜故郷の常世の国を出て旅の空にいる雁も 仲間に外れないで一緒にいるあいだは 心も慰みま…
心から 常世《とこよ》を捨てて 鳴く雁を 雲のよそにも 思ひけるかな 中秋の十五夜 源氏の君を囲んで過ごす。惟光の歌 〜自分から故郷である常世を捨てて 旅の空に鳴いて行く雁を ひとごとのように思っていたことよ。 【第12帖 須磨 すま】 初雁《はつかり》…
かきつらね 昔のことぞ 思ほゆる 雁はそのよの友ならねども 今日は中秋の十五夜 明るい月明かりの中の良清の歌 〜次々と昔の事が懐かしく思い出されます。 雁は 昔からの友達であったわけではないのですが‥ 【第12帖 須磨 すま】 初雁《はつかり》は 恋しき…
初雁《はつかり》は 恋しき人の つらなれや 旅の空飛ぶ声の悲しき 今宵は十五夜なりけり‥ 宮中の音楽が思い出される秋の夜の源氏の歌 〜初雁は恋しい人の仲間なのだろうか 旅の空を飛んで行く声が悲しく聞こえる 【第12帖 須磨 すま】 初雁《はつかり》は 恋…
恋ひわびて泣く音《ね》に紛《まが》ふ浦波は 思ふ方より風や吹くらん 秋の須磨の里‥耐え難く寂しく とめどなく涙が流れる。 琴を弾きながら歌う源氏 〜恋いわびて泣く我が声に交じって 波音が聞こえてくる。 それは恋い慕っている都の方から 風が吹くからで…
荒れまさる 軒のしのぶを眺めつつ 繁《しげ》くも露のかかる袖かな 源氏の君へ送った 悲しい心を書いた花散里の手紙 〜日に日に荒れていく軒の忍ぶ草を眺めていますと ひどく涙の露に濡れる袖ですこと。 【第12帖 須磨 すま】 花散里《はなちるさと》も悲し…
あまがつむ 歎《なげ》きの中に しほたれて 何時《いつ》まで 須磨の浦に眺《なが》めん 源氏は六条御息所に手紙を書いた。 返事を得る喜びに自分を慰めているのであった 〜海人が積み重ねる投げ木(嘆き)の中に 涙に濡れて いつまで須磨の浦にさすらってい…
伊勢人の 波の上漕ぐ 小船《をぶね》にも うきめは刈らで 乗らましものを 源氏は六条御息所に手紙を書いて送り 返事を得る喜びで自分を慰めている 〜伊勢人が 波の上を漕ぐ舟に 一緒に乗ってお供すればよかった‥ 須磨で浮海布など刈って 辛い思いをしている…